毎月の振込日、経理担当者の手元にはこんな光景が広がっている。
Gmail に届いた請求書 PDF を 1 枚ずつ開く。振込先の銀行名、支店名、口座番号、金額を目で読み取る。それをネットバンキングの画面に手入力する。30 件あれば 30 回。間違えたら組み戻し手数料 880 円。
この作業を一括で終わらせる方法がある。全銀フォーマットだ。
全銀フォーマットとは
全国銀行協会が定めたデータ形式で、複数の振込先情報を 1 つのテキストファイルにまとめられる。このファイルをネットバンキングにアップロードすれば、30 件だろうが 100 件だろうが一括で振込が完了する。
みずほ、三菱 UFJ、三井住友、りそな。主要な銀行はすべて対応している。法人口座でインターネットバンキングを使っていれば、ほぼ確実に「全銀フォーマットでのファイル取込」ができる。
つまり、振込データを全銀フォーマットに変換さえできれば、手入力は不要になる。
問題は「どうやって作るか」だ。
方法 1: Excel VBA で自作する
最も古典的なやり方。Excel のシートに振込先情報を並べて、VBA マクロで全銀フォーマットのテキストファイルを生成する。
実際にやろうとすると、けっこう面倒くさい。
全銀フォーマットは 120 バイトの固定長レコードで構成される。ヘッダレコード、データレコード、トレーラレコード、エンドレコードの 4 種類。数字は右詰めゼロ埋め、文字は左詰めスペース埋め。文字コードは Shift_JIS で、半角カタカナしか使えない。
これを正しく実装するのに、まず全銀協の仕様書を読み込む必要がある。VBA で固定長レコードを組み立てるコードを書いて、Shift_JIS で出力する処理も書く。銀行によって微妙に仕様が違うので、テスト送信をして確認する。ここまでやって、ようやく 1 回目の一括振込ができる。
さらに厄介なのは、このマクロを作った人が辞めた瞬間、すべてが止まること。引き継ぎなしで退職されたら、VBA のコードを読める人を探すか、システム会社に発注するしかない。見積もりが数百万になるケースも珍しくない。
動くことは動く。でも、属人化と隣り合わせだ。
方法 2: 銀行やろうきんの無料ツールを使う
中国ろうきんや足利銀行など、一部の金融機関が無料の全銀フォーマット変換ツールを提供している。Excel に振込先を入力すると、全銀フォーマットのファイルが出力される。
無料なのはありがたいが、制約がある。
まず、そのツールが対応している銀行でしか使えないケースが多い。ツール自体が Excel マクロで作られていることもあり、Mac や Google スプレッドシートでは動かない。更新頻度も低く、OS や Excel のバージョンアップで動かなくなるリスクもある。
そして結局、振込先の情報を手入力する工程は残る。請求書 PDF を見ながら、銀行名、支店名、口座番号、金額を 1 件ずつ Excel に打ち込む。手入力がネットバンキングから Excel に移っただけで、本質的な手間は変わっていない。
方法 3: GAS(Google Apps Script)で自動化する
エンジニア寄りの経理担当者がたどり着くのが、GAS での自動化だ。Zenn や Qiita に「GAS で全銀フォーマットを生成する」という記事がいくつもある。Gmail から請求書メールを検索し、Google スプレッドシートに転記して、全銀フォーマットのテキストを生成する。
仕組みとしては正しい。だが、これもまた属人化の再生産だ。
GAS のコードを書ける人が社内に 1 人いれば動く。でも、その人が異動したら? 産休に入ったら? スクリプトの仕様書はたいてい存在しない。コードの中身を理解している人が 1 人しかいない状態で、毎月の振込業務が回っている。
いつか壊れる。壊れたとき、直せる人がいない。
方法 4: 請求書受領 SaaS を導入する
invox 受取請求書やバクラク請求書のような、請求書受領に特化した SaaS もある。AI で請求書を読み取り、仕訳データや振込データを生成してくれる。全銀フォーマットの出力機能を持っているサービスもある。
機能的には申し分ない。ただ、月額数万円からの料金設定で、中小企業にとっては「振込の自動化だけのために」導入するにはコストが重い。請求書管理、仕訳、ワークフロー承認、電帳法対応と、いろんな機能がバンドルされている分、価格もそれなりになる。
振込の手入力をなくしたいだけなのに、経理システム全体を入れ替える決断を求められる。
やりたいことはシンプルなはずだ
- メールで届いた請求書 PDF から、振込先と金額を読み取る
- それを全銀フォーマットに変換する
- ネットバンキングにアップロードする
これだけ。仕訳とか電帳法とか、そういう話は後でいい。まず目の前の 30 件の手入力をなくしたい。
Saturn でやる場合
Saturn は「AI が動く Excel」だ。見た目は普通のテーブル。でも、列がただのデータ入れではなく、自動で仕事をする。
やることは 3 ステップ。
① Gmail 連携で請求書メールを取り込む
Gmail と連携すると、請求書が添付されたメールを検索して一覧表示する。差出人、件名、日付範囲でフィルターできる。取り込みたいメールを選んで、テーブルに行として追加する。
② AI が請求書 PDF を自動解析する
エンリッチ列を追加すると、添付 PDF の中身を AI が読み取る。銀行名、支店名、口座番号、金額、支払期限、発行元。すべて自動でセルに入る。手入力はゼロだ。
③ 全銀フォーマットで一括出力する
テーブルに並んだ振込データを選択して、全銀フォーマットで書き出す。Shift_JIS、120 バイト固定長、半角カタカナ変換。仕様どおりのファイルが生成される。あとはネットバンキングにアップロードするだけ。
30 件の請求書を処理するのに、かかる時間は 5 分。
比較
| Excel VBA | 銀行ツール | GAS | 請求書 SaaS | Saturn | |
|---|---|---|---|---|---|
| 導入コスト | 自作 or 外注 | 無料 | 自作 | 月額数万円〜 | 月額数千円 |
| PDF 読み取り | 手動 | 手動 | 手動 or 実装必要 | AI-OCR | AI |
| 全銀出力 | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ | ✅ |
| 属人化リスク | 高い | 低い | 高い | 低い | 低い |
| 学習コスト | VBA 知識必要 | 低い | GAS 知識必要 | 中 | Excel が使えれば OK |
| 担当者退職時 | 止まる | 動く | 止まる | 動く | 動く |
まとめ
全銀フォーマットを作る方法は 5 つある。どれを選ぶかは、会社の規模と「誰がメンテするか」で決まる。
Excel VBA や GAS は、作れる人がいるなら動く。でも、その人がいなくなった瞬間に止まる。銀行の無料ツールは安全だが、請求書 PDF からの手入力は残る。請求書 SaaS は機能豊富だが、振込だけのために導入するには重い。
振込の手入力をなくす。担当者が辞めても止まらない。この 2 つだけを解決したいなら、テーブルに請求書を入れて全銀フォーマットで出すだけの Saturn が、いちばんシンプルだと思う。
Saturn — AI が動く Excel
14 日間無料トライアルあり。Gmail アカウントがあれば、30 秒でセットアップが終わります。